日本に来たばかりの人がいちばん心配なものは、たいてい「地震」です。震度5を超える揺れは、毎年どこかで起きています。
でも安心してください。日本の建物は、世界でもトップクラスの耐震基準でつくられています。多くのケースで「揺れた瞬間にすべきこと」と「家にあるべきもの」を知っているだけで、命を守る確率はぐっと上がります。
この記事では、揺れたその場でとるべき行動、揺れがおさまったあとの確認、家族との安否連絡、そして「今日そろえるべき備え」を、順番にお伝えします。
揺れた瞬間にやることは「3つだけ」
世界中の防災機関が推奨している、もっとも基本の動作があります。アメリカ発の「ShakeOut(シェイクアウト)」という訓練でも使われ、日本の自治体も採用しています。
Drop(まず低く)
立っている場合は、まず姿勢を低くしてください。転んでケガをしないためです。
Cover(頭を守り)
つぎに、テーブルや机の下にもぐり、頭を守ります。近くに机がなければ、両手とカバンや座布団で頭をおおいます。
Hold on(動かない)
揺れがおさまるまで、その姿勢のまま動きません。机の脚をしっかりつかみ、机ごと動いてもいいようにします。
「外に出る」は基本的に間違い。日本の建物は揺れに強く設計されています。むしろ外に飛び出すと、ガラスや看板の落下、ブロック塀の倒壊で大ケガをする危険があります。
場所別の正しい行動
揺れた時にいる場所によって、安全な動き方は変わります。
家の中
- 火を使っているときも、無理に消しに行かない(転倒してやけどの危険)
- 揺れがおさまったら元栓を閉め、ブレーカーを落とす(通電火災の予防)
- 「家が倒れそう」と思うほどでなければ、屋内のほうが安全
寝ているとき
布団や枕で頭を守り、ベッドの下にもぐる、または壁際で丸くなります。寝室には、倒れる家具や割れる窓を置かないのが理想です。
高層ビル・マンション
長周期地震動という、ゆっくり大きく揺れる現象が起きます。エレベーターは絶対に使わないでください。階段を使い、家具は固定しておきます。
電車・地下鉄
電車は自動で緊急停止します。つり革や手すりに両手でつかまり、車掌の指示を待ちます。自分の判断でドアを開けたり線路に降りたりするのは大変危険です。
駅のホーム・繁華街
頭を守りながら、広い場所に移動します。ガラスの下、看板の下、古い塀の近くは離れます。
自動車を運転中
ハザードランプを点けながら、道の左側にゆっくり停車します。エンジンを切ったらキーは付けたまま、ドアロックもせず車を離れる方が良いとされます(救助活動の邪魔にならないため)。
「あの音」が鳴ったら——緊急地震速報
スマートフォンから「ピロン、ピロン」「緊急地震速報です」という独特の音声が流れたら、それが緊急地震速報です。
このシステムは、震源に近い地震計が初期微動(P波)をとらえた瞬間に、後から来る大きな揺れ(S波)の到達を予測して知らせるものです。警報から揺れまで、数秒〜数十秒しかありません。その時間でできる行動は限られていますが、それでも、
- 火の近くにいたら離れる
- 机の下にもぐる
- 道路上なら減速する
これだけでも被害はずいぶん減らせます。
緊急地震速報は予測なので、外れることもあります。「鳴ったのに揺れなかった」は失敗ではなく成功。空振りを許す設計だからこそ、間に合うのです。
揺れがおさまったあとの行動
大きな揺れのあとは、すぐに動き出さないでください。余震が来ます。
- 自分とまわりの安全を確認:ケガはないか、家具が倒れていないか
- 火の元と電気を確認:ガスの元栓を閉め、臭いがしたら窓を開けて換気
- テレビ・ラジオ・スマホで情報:津波警報が出たら、即高台へ
- 靴を履く:ガラス片でケガをしないため
- ドアを開ける:建物が歪むと、ドアが開かなくなることがあります
自宅が危険なら、避難所に移動します。近所の避難所は、今日のうちに調べておきましょう。
家族・友人と連絡を取る方法
大きな地震のあとは、電話が非常に繋がりにくくなります。救急活動を邪魔しないため、緊急以外の通話は控えてください。
災害用伝言ダイヤル「171」
NTTが提供する無料サービスです。
- 録音:171 → 1 → 自分の電話番号
- 再生:171 → 2 → 相手の電話番号
「いま無事です。避難所にいます」のような短いメッセージを残せます。
LINE・SNS
家族や友人とは、LINEのスタンプ1つでも安否を伝えられます。通信が不安定でも、テキストは遅れて届きます。電話よりLINEや災害用伝言板(web171)を優先しましょう。
今日から始める「日本の備え」
「地震が来てから」では遅い。日本では、次の4つを用意しておくことが標準とされています。
1. 飲料水と食料:3日〜7日分
内閣府は最低3日分、できれば1週間分の備蓄をすすめています。
- 水:1人1日3リットル × 3日 = 9リットル
- 食料:レトルトご飯、カップ麺、ビスケット、チョコレート
2. 携帯トイレ
断水するとトイレが流せません。1人最低5回分、できれば1週間分(大人1人約35回分)。これは多くの人が忘れがちで、被災地でいちばん困る物の1つです。
3. 非常持ち出し袋
家を出て避難所に行く時に、すぐ持って出られる袋。中身の例:
- 懐中電灯(電池式)と予備電池
- モバイルバッテリー
- 現金(1万円分程度の小銭中心)
- パスポート・在留カードのコピー
- 保険証のコピー
- 常備薬・お薬手帳のコピー
- ホイッスル(瓦礫の下でも居場所を知らせるため)
- マスク、軍手、ウェットティッシュ
- 携帯ラジオ(乾電池式)
- 着替え、タオル
4. 家具の固定
地震でケガをする原因の多くは、倒れた家具や落ちた物です。L字金具や突っ張り棒で固定し、寝室には背の高い家具を置かないようにしましょう。100円ショップでも転倒防止グッズは買えます。
外国人のための追加の備え
言葉が不安なときに役立つ情報源があります。
Safety tips(観光庁公式アプリ)
緊急地震速報・津波警報・気象警報を多言語でプッシュ通知してくれます。無料でダウンロードでき、15言語以上に対応しています。
NHK WORLD-JAPAN
緊急時は多くの言語でテレビ・ラジオ放送を行います。スマホアプリでも視聴できます。
自治体の多言語防災ハンドブック
多くの市区町村が、英語・中国語・ベトナム語などで防災ハンドブックを配っています。役所の窓口か、自治体の公式サイトで入手できます。
避難所の場所を今日確認する
「(自分の住所) 避難所」で検索し、GoogleMapsに保存しておきましょう。学校や公民館が多く、歩いて行ける場所にあるはずです。
よくある質問
Q. 地震のとき、家のドアは開けたほうがいい?
A. 揺れている最中に走って開けに行くのは危険です。揺れがおさまったら確認してください。建物が歪むとドアが開かなくなり、閉じ込められる可能性があります。
Q. 緊急地震速報の音はどこで鳴る?
A. テレビ・ラジオ・スマートフォン(主要キャリア各社が標準対応)で鳴ります。マナーモードや消音にしていても鳴る設定が基本です。設定は機種ごとに異なるので、購入時に「緊急速報」が有効か確認してください。
Q. 「震度」と「マグニチュード」はどう違う?
A. マグニチュードは地震そのものの規模(エネルギー)で、1つの地震に1つの値。震度は場所ごとの揺れの強さで、日本は0〜7(5と6は弱・強に分かれる)の10段階。震度5弱以上は「家具が倒れる可能性がある揺れ」と覚えてください。
Q. 津波警報が出たら、何階に避難すれば安全?
A. 目安は「3階以上・できれば4階以上」、または近くの津波避難ビル(標識が出ています)です。海や川から離れ、高い場所へ逃げてください。車で逃げると渋滞に巻き込まれる危険があるので、基本は徒歩です。
Q. 子どもや高齢者がいる家庭で気をつけることは?
A. 離乳食・粉ミルク・おむつ・介護用品・常備薬は、避難所にすぐ届くとは限りません。家族構成に合わせて1週間分を自宅に備えてください。
Q. 賃貸でも家具の固定をしていい?
A. 突っ張り棒や粘着マットは壁に穴を開けません。多くの大家さんも転倒防止グッズは歓迎します。壁に穴を開けるタイプは、事前に大家さん・管理会社に相談してください。
Q. 旅行中に地震が来たらどうすればいい?
A. ホテルの部屋にある避難経路図を確認しておきます。揺れたら机の下に隠れ、揺れがおさまったらフロントに連絡。エレベーターは使わず、階段で避難します。
最後に
日本は地震大国ですが、備えがあれば冷静に対処できる国でもあります。今日できる3つを紹介します。
- 家具1台を固定する
- 水500mlのペットボトルを6本買って家に置く
- 自分の住所の避難所を検索して保存する
この3つができれば、すでに多くの在日外国人より備えがあります。揺れる前にやることが、いちばん命を守ります。
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参考・出典
- ShakeOut(シェイクアウト)公式 — 日本シェイクアウト提唱会議 — 「Drop, Cover, Hold On」基本行動
- 気象庁「緊急地震速報の仕組み」 — P波/S波の解説
- 政府広報オンライン「緊急地震速報と津波警報」
- 内閣府 防災情報のページ「災害の備え、何をしていますか」 — 備蓄の基本
- 日本赤十字社「非常時の持出し品・備蓄品チェックリスト」
- NTT東日本「災害用伝言ダイヤル(171)ご利用方法」
- NTT東日本「災害用伝言板(web171)」
- 観光庁「Safety tips」(多言語防災アプリ)/NHK WORLD-JAPAN(緊急時多言語放送)
※ 本記事の制度・数値は2026年5月時点の情報に基づきます。